タッチカウンセリングが
生まれるまで
our advancement
自身の挫折経験がきっかけに
外資系企業で、キャリアアップすることしか興味がなかった私が、まったく畑違いのカウンセラーになろうと思ったきっかけは、離婚の前後に自律神経失調症になり、家に閉じこもる経験をしたことでした。
その頃の私は、元夫から一方的に精神的苦痛を与えられたと思っていましたし、元夫は、何らかの理由で、人間としての大切なものが、欠落していると思い込んでいました。
でも、カウンセラーのもとに通い、精神的打撃から立ち直っていく過程で、元夫だけに問題があったわけではなく、自分自身が「アダルトチルドレン(=何かに満たされていない大人)」であり、そのことが離婚の原因の一つであったことに気づいたのです。
それと同時に、元夫も精神的に追い込まれていたことや、私も彼を傷つけていたこと、結婚に失敗する理由は、片方だけの責任ではないことに気づきました。
すると、離婚したことは正解だったと心から思えるようになり、元夫を恨む気持ちも消え、離婚後の苦しさも嘘のように無くなりました
母親からの愛を感じる事の大切さ
その後、私は「アダルトチルドレン」に大きな関心を持ち、一心不乱に勉強しました。最初のうちは、元夫のことを分析したくて始めたことでしたが、途中から私自身の人生を考えるうえで、とても重要な作業となったのです。
その結果わかった重大なことは、大人になってから、私のように精神的なダメージを受ける人達の多くは、乳幼児期の母親との関わりの中で、満たされなかった何かを持っている、という思いもよらない事実でした。
私の場合は、「母から無条件にたくさん愛されている」という確信を持ちきれなかったことが、知らず知らずのうちに私の自己評価を低くさせていたのです。
自己評価の低い人は、他人に必要以上に気をつかったり、他人からの評価を気にしすぎたりして、他人から良い評価を得られる人物像を演じることで、日々精神的に疲れてしまいます。
私は、別に母から虐待を受けていたわけでもないし、今思い返しても、母は私を充分に愛してくれていました。
それなのに「母から愛されている」確信を持てなかったのは何故かというと、それは、母の私に対する愛情の伝え方、つまりコミュニケーションのとり方がうまくできていなかったからでした。
意思の疎通が充分ではなくて、溢れるほどの愛情をうまく伝えきれていなかったのです。
では、うまく「愛情を伝える」にはどうすればよいのでしょうか?
言葉より深く伝わるスキンシップ
母親が子どもに愛情を伝える行為は、初期のうちはもっぱら「スキンシップ」です。言葉を理解できない赤ん坊は、温かい母親の肌に包まれることで「無条件に愛されていること」を本能的に感じとるのです。
私の娘が0歳の時に、そのスキンシップのツールの一つとして、私はベビーマッサージに出会いました。
私がベビーマッサージに興味を持ったのは、私自身が愛情を伝える行為であるスキンシップを、渇望していたからかもしれません。
ベビーマッサージは娘を健康にし、心身を癒し、それと同時に私自身をも癒してくれました。言わば、私の満たされていない部分を、赤ん坊である娘とのスキンシップに補ってもらったのです。
平均よりも小さめだった娘はマッサージによってどんどん大きくなり、保育園に通っているのに病気らしい病気にかかりません。
娘が言葉を話せない赤ん坊の間も、私は彼女の考えていることが手に取るようにわかるので、お互いストレスが少なくてすみ、娘は精神的にとても安定していました。
どうやら、私はスキンシップをとりながら、自然にカウンセリングの技術を子育てに取り入れていたのです。
また、娘のコミュニケーション能力は早いうちから高くて、言葉を理解することも、言葉を正確に話すこともずば抜けて早く身につけました。
カウンセリングを取り入れたベビーマッサージの驚くべき効果を目の当たりにして、私は、もっと多くの人達にスキンシップの大切さを伝えなければ、と思うようになり、ベビーマッサージ指導者の資格をとり、お母さん方に教え始めました。
母子の絆を作るうえで、スキンシップはなくてはならないこと。
お母さんは、スキンシップと言葉の両方で「あなたを無条件に愛している」と、我が子に伝え続けなくてはならないこと。
子育てにおいて、これらがどれほど大切なことかを、私は自分の魂の叫びに突き動かされるように、子育て中のお母さんに伝えてきました。
なぜなら、私にとって「カウンセリングによって自分自身を見つめ直すこと」と「スキンシップによって愛情を感じとること」は、挫折から這い上がるための二本柱だったからです。
そして、「カウンセリング」と「スキンシップ」という2種類のコミュニケーションは、自然に私の中で融合され、知識と経験に基づいて、独自の「タッチカウンセリング」を考案するに至りました。
タッチカウンセリングでできること
タッチカウンセリングは、私の中で満たされない何かを補うために、必然的に誕生した「人を幸せにする方法」だったのです。
タッチカウンセリングは赤ちゃんだけでなく、何かに満たされていない大人を癒すためにも、効果的です。
また一方で、障害のある方や病気の方、高齢の方など、言語によるコミュニケーションに支障のある方々にも、多大な効果を発揮します。
そして、施術される側だけでなく、する側も癒されることは特筆すべきことです。それは、施術する側にも『何かに満たされない』想いがある証拠なのかもしれません。
本当は、すべての人々が多かれ少なかれ『何かに満たされない』想いを無意識に持っていて、それが近年の精神的不安定や犯罪増加を招いているのではないでしょうか。
タッチカウンセリングを確立した後、2005年8月に「日本タッチカウンセリング協会」を設立し、『人々が私のような辛い挫折を経験しないように』との想いで、お母さん方や、人を育てることやケアすることを仕事にしている方々に、タッチカウンセリングを指導することに力を注いでいます。
また、私はタッチカウンセラーとして重度心身障害者の病院や、介護施設などでもスタッフの指導をしているのですが、私からタッチカウンセリングを受けている患者さんが、私が来るのを心待ちにしてくれていて、施設の他のスタッフがお世話しようとしても、『出口さんでないといやだ』と駄々をこねることもあります。困ったことではありますが、タッチカウンセラー冥利につきます。
人をケアすることを仕事にしている人にとっては『あの人でないといやだ』と言われることは、このうえなく嬉しいことだと思いませんか?
何より、私が接していると、その患者さんの体調が安定したり、顔色が良くなったり、表情が穏やかに変化していくのは、まわりの人たちも不思議がるほどです。
患者さんたちは体調が良くなるばかりでなく、精神力が強くなり、やがて生命力をもち、自ら回復への道を進んでいかれます。
タッチカウンセラーは、相手のその場の痛みや辛さを改善するだけでなく、相手の人生そのものに影響を与えることまでできるのです。
タッチカウンセリングで幸せの輪を広げたい
タッチカウンセリングを知った方々が、幸せになっていく姿を見守ることは、大変嬉しく、それが私の生き甲斐となっています。
私一人で伝えられる範囲は限られていますので、タッチカウンセリングを指導できるタッチカウンセラーを養成して、たくさん世に送り出すことで、より多くの『満たされない想い』を持った方々を救いたいと思っています。
そして、タッチカウンセリングを伝え広めるタッチカウンセラー達にも、私のように言い表せないほどの充実感と幸せを味わって欲しいと願っています。
そのためにも、タッチカウンセラーにとって、この仕事が自己実現となり、それぞれが自分らしい人生を送れるように、できる限りのサポートをしていくつもりです。
私もタッチカウンセラー達も、「世の為、他人の為」のみならず、自分自身の為にも活動を続けていきたいのです。